相続遺言判決実例集…(福島家審・平成元年12月25日家月42巻9号36頁)


  • (福島家審・平成元年12月25日家月42巻9号36頁)
 

(福島家審・平成元年12月25日家月42巻9号36頁)


 (福島家審・平成元年12月25日家月42巻9号36頁)

「以上認定の事実によると,本件申立は,相手方が申立人の孫らを債務者として,いわゆるサラ金などから4口合計280万円の借金をさせて相手方がその融資を受けながら支払いを怠ったため,孫らがサラ金などから請求を受けて弁済する破目になったことを契機として,地味に暮している申立人や長男Aらと異なり,転職転業が激しく,借財もある相手方の存在が,将来,かなりの資産を有する申立人の死亡により相続が開始したとき,その遺産分割問題で紛争の種になりかねないと考え,Aがその紛争防止策を警察署や家庭裁判所に聞き回り,申立人と相談の上なされたものと認められる。言うまでもなく,推定相続人廃除制度は,特定の推定相続人に法定の廃除事由に該当する非行があり,いわゆる相続的協同関係を害すると評価される場合,その推定相続人の相続権を剥奪し,被相続人の私有財産権と自由意思の尊重に資するのを目的としたものである。そして,相続権の剥奪は,推定相続人の利害に及ぼす影響が極めて深刻であり,安易にこれを是認すると,遺留分制度を認めた現行相続法秩序を混乱させるおそれが大であるから,法定廃除事由に該当するか否かを判断するには慎重な考慮を要する。そこで,本件についてみるに,前記認定のとおり,相手方に,民法892条所定の被相続人に対する『虐待又は重大な侮辱,その他重大な非行」等の廃除事由の存在を肯定できる事実を認めることはできず,かつ,申立人らもこれら廃除事由に該当する事実は相手方には存在しないことを認めているところである。相手方が申立人の孫らを債務者としてサラ金等から借金させ,約束を守らず弁済を怠り迷惑,不利益を与えたことについては,相手方は当然その責任を負わなければならないが,そのことをもって相手方の相続権を剥奪するに足る『著しい非行があった」と認めるのは無理である。なお,申立人は,これまで相手方に多額の金員を与え,宅地を無償で貸与したことなどを強調し,ある程度それらの事実を認めることができるが,それらは親子間の愛情からなされた援助であり,いずれ遺産分割の際に相手方の特別受益として処理されるのは別として,廃除事由該当事実と認めることはできない。」

 


 

 


 

 
相続遺言判決実例集